高精度な 3D 計測からモデル作成までの リードタイムを大幅短縮
Customer Case Study - 事例
株式会社U’s Factory(以下、U’s Factory)は、建設・建築で必要となるデータを管理・活用するBIMを軸に、BIMマネージャーの役割を果たす会社として2013年に設立された。設立当初から、3Dスキャンで取得した点群データを活用することで、3Dモデル生成、各種図面作成に至るトータル時間を劇的に短縮できると判断。ライカジオシステムズの 3Dレーザースキャナーを導入し、現場の状況に応じて各機種を最適に組み合わせながら、高精度な点群データを短時間で効率よく取得するノウハウを積み重ねている。
顧客ニーズに即した「Only Oneサービス」を提供
従来、測量から、3D CADモデル生成、各種図面データ作成に至る作業は、プロセスごとに複数の協力会社を交えて行われてきており、膨大な作業量を要してきた。 U’s Factory の代表取締役社長 上嶋泰史氏は、大手ゼネコンの技術部員としてこうした問題をつぶさに体験するなかで、 ITを活用して現場作業を劇的に軽減し、ゼネコン、大手設計事務所などと協働しながら業界を改革することを目指して、同社を設立したのである。U’ s Factory は、測量・作図・モデリングをワンストップで行う。しかも、計測サービス、あるいは、3Dモデル生成にとどまらず、顧客が最終的に何をしたいのかという要望にも応じるべく、コンサルティングを行い、その顧客の目的に最適な構成図・構造図・施工図・設備図等を作成して納品する。顧客ニーズに即した「Only One サービス」を提供するのが特徴である。
U's FactoryのOnly Oneサービス
点群データから3Dモデルを生成するには「高精度」がカギ
同社は会社設立当初から、3Dレーザースキャナーが計測する点群データに注目していた。既存施設の改修では、新築時に作成された設計図と現況がかけ離れていることが多く、まず現場を細かく計測して現況図を作成しなければ作業が進められない。取得した点群データから 3D CADデータを短時間で生成できれば、現況図作成までにかかる時間を大幅に短縮できると、上嶋氏は考えた。そこでまず 2014年、ライカジオシステムズの「Leica Nova MS50」を導入した。Nova MS50 は、高精度測量を行うトータルステーションであると同時に、360°の 3Dスキャンもできるという、画期的な仕様のマルチステーションであった。
「各社製品を慎重に比較検討したうえで、湿気や気温変化に強く、高精度を担保できる計測機器であると、ライカジオシステムズ製品を評価しました」と上嶋氏。たとえば既存施設を計測するとき、1 回のスキャンの誤差が数㎜であっても、複数回のスキャンデータを合成して累積誤差が最終的に数㎝になってしまえば、3Dモデル生成には使えない。土木のみならず建築分野でも顧客ニーズに応えていくために、利用する点群データに「高精度」の結果を強く求めたのだ。
その後、3Dレーザースキャナー「Leica ScanStation C10」を購入して、3Dスキャンの時間短縮を図った。「ライカジオシステムズ製品は、三脚や整準盤等のアクセサリー類も、自社開発で厳密な品質管理がされているので精度が高い。厳しい目で高精度を追求したからこそ、ライカジオシステムズ製品を選び続けてきました」と上嶋氏は語る。U’ s Factory は現在、広範囲における計測精度の誤差 2 ㎜以内という、高精度な計測結果を担保している。
より良い 3Dスキャン体制を求めてBLK360と RTC360を導入
点群デ ータ活用は、U’ s Factory の業務の流れにしっかり定着した。さらに、より良い 3Dスキャン体制を追求する一環として、2018年には、ライカジオシステムズの新製品「Leica BLK360」と「Leica RTC360」、および「Leica GS18 T」を導入した。「BLK360 は軽く、小さく、計測時間が速い。水平精度を調整後、機器を据えてボタンを押すだけ。腰をかがめないと人が入れない狭い機械室で、配管の現況図を作成する案件でも活用しました」と上嶋氏。
一方、RTC360 は、2018年9月の発売を待ち受ける形で、日本第1号機を購入した。「RTC360 は、計測時間が BLK360 よりもさらに速く、水平精度をチルト補正で自動管理する。さらに画期的なのは、タブレットに点群データが飛んできて、計測位置をその場でリアルタイムに確認できること。事務所に帰ってパソコンにデータを読み込み後、『しまった、ここもとっておけばよかった』といった、計測忘れや計測漏れが生じにくくなり、非常に効率がいい」と上嶋氏は強調する。計測現場でタブレット画面を見ながら、複数回スキャンで取得した点群データの事前合成処理が簡単にでき、取り忘れをなくしたことの効果は大きい。事務所に帰って行う緻密な点群データの合成処理も微調整だけで済むため、作業時間は他機種の半分程度である。RTC360 のこうした特長は、 8,000 ㎡ほどの別荘地の現況敷地計測の案件でも発揮された。
「たまたま人も機器も出払っていたので、わたしが 1 人で出向いて2時間程度で計測しました」と上嶋氏。現場は樹木がたくさん生えて「林」状態になっていた。林は、計測位置の特徴がわかりにくいが、 RTC360 はスキャンの軌跡がわかるため、計測位置の重なリを把握しやすかった。上嶋氏は、ターゲット無しで、その場でざっくりした合成を行うノンターゲット計測で、効率よく27地点のスキャニングを完了したという。
林の中の別荘地を RTC360 で現況計測
「林のようなところは、RTC360 の利用が非常に効果的でした」と上嶋氏。特徴がない「林」でも複数の点群データを楽に事前合成できた。
複数機種の組み合わせで、最適な計測計画を立案
Nova MS50、ScanStation C10、BLK360、GS18 T、RTC360――。
複数のライカジオシステムズ製品をそろえたことで、 U’s Factory は、効率よく、より短時間で計測を行う体制を手に入れた。計測時間は短いほど顧客に喜ばれる。人が使っている施設や工事作業途中の現場を測ることが圧倒的に多いからだ。顧客は、納品物も少しでも早くほしい。U’s Factory は、いかに短時間で目的に沿った点群データを取得できるか、最適な計測計画づくりに力を注いでいる。
「MS50と C10 だけでは、精度は担保できますが、計測作業時間がかかります。かといって、機器台数を増やす発想では、効率よい計測はできません。 RTC360 や BLK360をうまく組み合わせることで、計測時間の合計を圧倒的に短縮できるようになりました。もちろん、 BLK360 だけで完結するわけではありません。あくまでもお客様が何を必要としているかを出発点にして、持ち時間と各機器の仕様とを最適に組み合わせる工夫をしています」と上嶋氏。Leica GS18 T(GNSSスマートアンテナ)で測位し、 MS50 と C10 で 300m 間隔に計測し、間を RTC360 や BLK360で計測するケースもあれば、 RTC360 主体に計測し、BLK360 で要所を補うケースもある。すべての機器を駆使しながら、効率よい計測を行うノウハウを積み上げてきた。
「ライカジオシステムズ製品がいくら高精度だといっても、ラインアップをそろえるだけで高精度なデータを取得できるわけではありません。精度を保つのはあくまでも『人』であり、『会社』です。いまだに『正解』はないと思いながら、決められた日数と条件の中で、最大限に精度を追求しているのです」と上嶋氏は言う。ノウハウは開発したソフトにも凝縮されている。たとえば、機器が進化して計測時間が短くなると、つい計測点を増やしてしまいがちだ。計測点が増えれば、データサイズが大きくなり、ノイズ除去などの後処理にかかる時間が増えてしまう。
こうした問題を解決するために U’s Factoryは、点群データからノイズ処理の自動化や、3D モデル作成時間のかかる敷地やパイプ形状など自動生成するプログラムを独自開発してきた。現在は、点群計測と 360度カメラで撮影したデータで測量を行い、3D CADモデルを作 成 する「Info360®」、 3D CADモデルおよびオブジェクト自動生成機能を使って使って積算・集計を自動化する「BIfor ARCHICAD」という 2 つのソフトを、開発、販売、サービス提供している。「点群データ活用は、土木・建築業界の改革に不可欠な要素です。点群データの活用範囲が拡大し、ビジネスとして市場が活性化していくことに役立つなら、当社ソフトとライカジオシステムズ製品をパッケージングして、同業他社へ提供することも考えていきたい」と上嶋氏は意欲的に語る。計測の目的は、 2点間の距離を出すことから、 3D モデルと 3D 図面の作成、さらには、ARやシミュレーションへの適用と変化してきた。計測後の活用ビジネスが多様化し、拡大すればするほど、点群データの精度はさらに高度なものが要求されていくに違いない。
BLK360 と RTC360(ページのトップ画像参照) で配管設備を現況計測
スキャンして取得した点群データ
点群データを BIMソフト「ARCHICAD」(GRAPHISOFT社)に取り込んで、 「BIfor ARCHICAD」を活用して3Dモデルを作成