Leica Cyclone 3DR – スマート・オートメーション
スマート・オートメ―ションで、必要な時に必要な情報を
数年前に当社が最初に目指したのは、Leica JetStream や TruView などのコラボレーション・ソフトウェア・プラットフォームを介して、スキャナーで取得したデータの公開や共有をおこないやすくすることでした。データを関係者と共有できるようにすることで、取得したデータを一つの場所から閲覧でき、迅速かつ簡単に点群の視覚化ができ、作業を効率的に行うことができるようになります。言い換えれば、これらのコラボレーション・プラットフォームは、ユーザーがスキャナーで取得したデータを、いつでもどこでも閲覧することを可能にするということです。
Magna社の事例
HxGN LIVE 2019の講演で、MAGNA社は「古いトンネルに最新の電車を通したいが、十分なスペースはあるだろうか」というシンプルな問いに答えるために、2つの計測データ収集方法を比較した事例を発表しました。この問いは、トンネル表面の元の図面がなく、さらに異なる規格の車両を通すために、既に何度も補修工事が行われていたことに起因するものでした。彼らが比較した方法は、従来の古典的な単点測定による計測方法と、もう一方は数百万点に及ぶ3Dレーザースキャナーによる計測データの収集方法でした。
従来の方法で収集したデータはまず Leica Infinity で合成し、Leica Cyclone 3DR(旧 3DReshaper)で処理しました。またMagna社は、ソフトウェア内で利用可能なアルゴリズムを使用して、点群データ内で探している情報を効率的に抽出することができたと報告しました。
Cyclone 3DR で使用したツール機能は以下の通りです:
- ノイズ除去で点群をクリーンアップ
- DTMツールで点群内の植生データを除去
- メッシュツールでトンネル覆工表面を作成
- 押し出しツールで車輌限界のシミュレーション
- レポート生成
トンネル自体は3Dメッシュのアルゴリズムと、欠損箇所を埋めたり、表面を滑らかにしたり、質を改善するための機能を使ってメッシュ化しました。この三角の表面は、後で干渉を回避するために解析し、参照データとして使用されます。この2つのアプローチの比較には、精度だけでなくコスト費用の比較も含まれていました。
比較結果は以下の通りです:
- 所用時間については、トータルステーションを用いた従来の方法では2週間以上かかった一方で、レーザースキャナーでは現場のデータキャプチャに1日、オフィスでのデータ処理に1日の計2日間の作業で完了しました。すなわち、従来のトータルステーションを用いた方式の5倍の早さです。
- 精度については、オペレーターがどの点を測定するかを決める必要がなくなったことから、レーザースキャナーを用いて取得したデータはヒューマンエラーがほぼなくなり、より正確かつ詳細で、信頼性が高いとの結果報告がありました。精度と密度の両方がレーザースキャナーのメリットであるとの結論が強調されました。トータルステーションを使用した際に現場で計測した作業員達の判断によって除外された、現場に落ちている小石の一つ一つの計測データまで、レーザースキャナーで取得した点群データには含まれていました。
スマート・オートメーションの構成要素
Magna社によって報告された「業務上の意思決定を支援するために、効率的なデータ処理ワークフローを介して正確で信頼性の高い情報を伝達する」という結果は、まさしく当社がお伝えしたいことです。レーザースキャナーのワークフローには、生産性と効率を上げるために6つの重要な構成要素があります。これらの6つの要素によって、スマートオートメーションを介して正確なデータを抽出できるようになります。
- データ保存
3Dレーザースキャナーで取得できる点が増えたことや新技術の操作性が向上したことにより、3D点群データのサイズはこれからも劇的に増加しつづけていくことでしょう。もう今までのように、データにアクセスする先はハードドライブである必要はありません。JetStream で提供するデータベース環境は、複数の関係者が異なるCAD環境から同時に同じプロジェクトデータにリモートでアクセスして操作したとしても、加えられた変更が全てクラウドのデータベースに同期されるため、信頼のおけるデータソースの一元管理がおこなえます。
- データへの素早いアクセスと共有
一元管理された信頼性の高いデータは重要で、そのデータに素早くアクセスし、プロジェクトの関係者ややクライアントと共有できるようにすることが、業務がうまく進む秘訣となります。全ての点群を取り込んだ膨大なサイズのデータセットでも、ストレスが溜まるような待機時間を無くし、いつでもアクセスして任意のプラットフォームでレンダリングし、必要なデータを取得できるようになるべきです。
- 相互運用性
3Dデータの世界では、数えきれないほどの種類のファイル形式があります。 オープンソース形式やコンソーシアム指定の形式、バイナリ形式のものまであり、点データから画像やタグ、計測値、メタデータまで、プロジェクトを完全に網羅している記録データはありませんでした。どのようなプロジェクトでも、データの準備、点検、モデル化、QA/QC、または情報共有のために、複数の異なるソフトウェアを使用しなければなりません。そのため、Cyclone 3DR で入出力するデータは、シンプルなワークフローで扱えるようにすることが重要です。
これらの取り組みを通して、当社は様々なアプローチを提案してきました。まず、2018年に登場したLGSファイル形式は、当社のあらゆるデジタル・リアリティ・プロジェクトに使えるファイル形式です。LGSファイルは CloudWorx プラグインを介して、様々なCAD環境で使える転送可能なファイル形式で、JetStream の機能を使用できるように設計されています。次に、CADへデータを直接転送する機能があります。Cyclone 3DR から AutoCAD やHexagon Mining の MinePlan など、他の3Dソフトに直接データを転送できるようになります。Cyclone 3DR は15種類ものファイル形式に対応しており、最近ではAECファイル形式にも対応できるようになりました。IFCとRVT、3D PDFへのエクスポートも可能です。
- アルゴリズム
アルゴリズムはスマート・オートメーション化を進めるにあたって重要なカギとなります。いくつかの操作手順に従うだけで全段階のデータを自動で処理できるよう、点群から情報を抽出する際に異なる技術を用いています。
Magna社からの使用例では、3つのアルゴリズムが重要視されていました。ノイズ除去、メッシュ化、そしてDTM抽出です。これらは数年前から注力して開発に取り組んできたアルゴリズムでした。ですが当然、Cyclone 3DR には、空間分布やブレークラインの抽出に応じて点のクラスターを作成するなど、作業の効率化に寄与する他の多くの機能があります。
当社では、最新の技術を活用するように努めています。ある領域のために開発されたツールや技術が、別の領域のワークフローに非常にマッチすることがよくあります。DTMは当初、測量用のツールとして考案されましたが、当初の設計意図とはかけ離れた特殊な抽出ワークフローに適用してみたところ、大成功を収めました。
- 専用ワークフロー
ここまでは、アルゴリズム、データの相互運用性、大規模な集中型データベースへの迅速なアクセスについて触れてきました。これらは、多種多様な用途をサポートするための、柔軟性の高い豊富なツール群で、ニッチで新たな用途で使用を試みるユーザーにとって、このツール群は有益なものです。しかし、一般的な用途でワークフローを自動化するためには、専用のワークフローツールやカスタマイズされたワークフローが必要となります。
業界や用途に特化したワークフローのガイダンスに沿ってユーザーは、点群データのインポートから、各中間ステップを含む成果物の生成までのステップを踏むことができます。3DReshaper から Cyclone 3DR への移行に伴い、柔軟性に長けた機能群は、断面検査やタンク検査などの異なる用途向けのガイダンス付きワークフローに再構成されました。同様に、Cyclone REGISTER 360 もまた、初心者ユーザーが簡単なプロジェクトを処理できるように、ガイダンス付きワークフローを中心に設計されています。
- 柔軟性
ここで注目すべき最後の要素は「柔軟性」です。当初に想定していた用途への使用に限定せず、新たな分野の用途に適応できる柔軟性を持った製品にするにはどうすればよいのでしょうか。Cyclone 3DR では、スクリプトをユーザーに提供することで、究極の柔軟性を実現しています。 スクリプトを使用することで、ユーザーは 3DR のツール群全てを活用して、連続して反復するタスクを自動化することができます。例えば、点群の読み込み、ノイズの除去、CADデータとのアライメント、比較、PDFレポートの作成など、ユーザーによる入力の有無に関わらず、これらタスクをすべてを自動化させることができます。
ですが、Cyclone 3DR のスクリプトは、Cyclone 3DR のツールバー内に既に存在する一連のタスクを繰り返させるだけのものではありません。球体内のすべての点を取得したり、この点のサブセットから最も適切なラインを作成して引いたりといった容易な機能を利用することで、ユーザーは追加のアルゴリズムを開発し、探している情報を抽出することができます。このようなアプローチは、道路の縁石を抽出することに特化したスクリプトで実証されています。例えば、このスクリプトでは、6つの簡単な機能が組み合わされています。 - ラインから一定距離離れた点データを切り離す
- 点群の削除
- 3Dメッシュ化
- 2つのメッシュを統合してベストフィットな3D作成
- マトリックス・トランスフォーメーションの適用
- ベスト・プレーン
これらの詳細レベルの機能を使うことで、BLK360 や BLK2GO のような据置型レーザースキャナー/ハンディ型レーザースキャナー、RTC や P-シリーズなどの高密度レーザースキャナー、Pegasus:Two や Pegasus:Backpack などの移動体計測システムなどの機器で取得したデータにスクリプトを適用することができます。このスクリプトは、数キロメートルにも渡る縁石データを抽出し、縁石の点を計測できなかった場合のみに停止します。
必要な時に必要な情報を
当社はお客様に、「必要な時に必要な情報を」提供できることに誇りを持っており、製品の改善に繋がるお客様からのフィードバックをいつでもお待ちしております。お客様へのサポート業務や現場からのフィードバックは、当社の製品開発ロードマップを作成するためのガイダンスとなります。当社の製品に対してご意見がございましたら、当社のサポート担当者までご連絡ください。
Cyclone 3DRについて詳細情報を必要とされている方は、製品ページをご覧いただくかお問い合わせください。
Gilles Monnier
General Manager, Technodigit
Reality Capture Division